二次元オタクが推し俳優に出会い5年経過して落ち着いた話
舞台を観に行ったことはありますか?
私はあります。3桁はいってないですが、2桁は見てます。
最近は2.5次元舞台、ミュージカルが流行りですね。
火付け役と言えるであろうミュージカル「テニスの王子様」を筆頭に、特に近年は多くの作品が舞台化しています。
自分もいわゆる「2.5次元」を観てから、劇場に行くようになりました。
長年のマンガ原作ファンで、月9やらのドラマは全くと言っていいほど興味が無く、とにかく二次元しか興味がありませんでした。
私が見ている2.5次元は毎年決まった時期に公演があるのですが、2012年に突如として彗星の如く現れた一人の役者に惚れ込み、そこから小劇場へと足を運ぶようになったのです。
(推しの名前は敢えて書きませんが、バレても問題ない、はず)
過去の公演でも素敵な演者さんはたくさんいました。
何人かは演者さんの名前と顔も覚えてました。
でも、出演する舞台やショーを、◯◯さんだからという理由で観に行ったことは無かったんです。
観に行く動機なんて何でもいい
「この俳優さん誰だろう」
そう発言すると、フォロワーさんが彼の情報を全力で投げつけてくれました。
名前、劇団、ブログ、近々劇団の公演があること……検索能力に長けた彼女には今でも感謝しています。
ブログを読み漁る内、私はこう思いました。
「この人の、2.5じゃない演技が見てみたい」
たまたま好きなキャラの役をやっていたからだろうと言ったらお終いですが、これはくだらないことではなく運命だと思ってます。
好きなキャラをやっていたから。
顔がいいから。
どんな動機であれ、きっかけはきっかけです。
そして、一人の俳優の演技を観るために、新幹線に一人で乗りました。
実在する人間のために愛知県を飛び出したのは初めてでした。
好きなマンガの各種イベントで東京大阪にはホイホイ行ってましたが、この時の目的は生きてる人間です。
嵐のメンバーさえ全員の名前を言えない私(※当時)が、三次元を理由に新幹線に乗るなど、ミラクルとしか言いようがありませんでした。
ファンレター問題
「公演後は面会(お見送り)がある」
そのシステムの意味が分からなかった当時の私。
聞けば、公演後に役者と話せる時間があるらしい。
正直迷いました。
イケメンと喋る耐性と顔が無い(社会人なのに化粧もしてないクソ)
というか何喋るの?感想?
手紙やプレゼントを直接渡せる???
いやでもせっかく会えるなら行かなくてどうする
私はLOFTへ走ってレターセットを買ってきました。
手紙とか小学校時代にクラスメイトとやってた文通以来です。
懐かしい気持ちに浸りながら、手紙を認めようとペンを取りました。
……
…………
………………
何書けばいいんだ?
難関でした。
相手は気の置けない文通友達ではありません。
こちらが一方的に知っているだけの成人男性(役者)です。
界隈では人気の役者さんらしいので、女性からのファンレターなんてきっと山ほど貰ってきたであろう相手。
何を書けばいいのかわからん。
ファンレターというものを書いたことがないのだから。
「応援しています。これからもがんばってください。」
応援してるけど!なんだか文面からこちらの熱意が伝わらない!
「益々のご活躍をお祈りしています。お体に気を付けてお過ごしください。」
事務的!!
分かった!演技してる時の感想を書こう!
「ぶっ倒れた姿が色気あって最高でした」
バカ野郎!!!!!正直者!!!!
(もう時効だと思ってるので今書きました)
— あんつぶ (@antsubu1132) May 23, 2018
マジでこれです
ちょっと待て。
毎週欠かさず週刊少年ジャンプを買って熱烈に感想を書いていた私は、当時は一体何を書いていた?
「推しキャラの舌ペロ最高だった」
ダメだ進歩してねぇ。
最終的にはなんとか言葉を絞り出して書いたんですけど、考えすぎて脳みそがでろでろになっていたので、何を書いていたのかはもう覚えていません。
シブリ風に言えば「積み荷を燃やして」、伊達政宗風に言えば「即火中」の気持ちだったことは確かです。
ファンレターに出演作の感想を書けるくらいなら、小学生時代の私は読書感想文のコンクールで賞を取っているのではないかと思います。嘘です言い過ぎました。
でも感想文が苦手なのは本当です。今でも上手く書けません。本は読むんですけどね、おかしいな。
小学校の頃は読書感想文が思いつかず、400字原稿用紙1枚だけで提出したことが有ります。
そのツケがまさかファンレターにまでくるなんて。
推しを観に行こう
チケットの買い方までフォロワーさんに教えてもらいながら、なんとかチケットを入手。
手紙も書いた。新幹線の切符も用意した。
到着したのは、初めての池袋でした。
品川とか上野、秋葉原など山手線の右半分は行っていましたが、左半分は初めてです。
初めて歩く池袋にドキドキしながら、公演場所で向かいました。
指定席ではなかった……はず、なので、適当に見晴らしの良さそうな場所に座りました。
周りには、私と同じく、初めて彼を観に来たという女性が何人か。
開演しました
私が予想していた舞台とはかなり違っていましたが
「あっ、面白い」
初めまして小劇場、こんにちは小劇場。
この作品の脚本家さんが、また私が好みなお話を書かれている方でして、初めて観る作品としては幸運だったと思います。
好みのストーリーと、素晴らしい推し役者。
「次の公演も観に行こう」
カテコの時に、はっきりと意思が固まりました。
「ロビーにて面会を行いますので」
きた
ロビーに出てしばらくすると、
出た!!!
素の!!!推しが!!!いる!!!生きてる!!!!(???)
見ただけで手汗がやばい!!!
分かってたけどずっと誰かと話している!!!
でも列ができてるわけじゃない!!空いたらすかさず行くという感じだ!!!
ハードル高ェな!!!
ぼっちの私は、ロビーの椅子でツイッターを見ながらやり過ごしていました。
しかし、大人気の推しは全然一人になりません。
今か!と思って立とうとすれば、別の女の子が声を掛けに行く。
ハードル高ェな!!!
「そろそろ面会を締め切らせていただきますので~」
YABAI
何のために手紙書いて大人しく椅子で待ってたんだ!!!
もういっそこのまま姿だけ見て帰ろうかなとか12599458回くらい考えたけど!!!
っていうか何て声掛ければいいんだ!?
他の人たちが何喋ってるのか聞いてなかった!!!
キェェェェェイッ!!!!!(立ち上がる私)
ワイ「はじめまして」
推し「はい!どうも!」
やっべぇ、顔がいい。(しかしなんか物理的に近い)
ワイ「〇〇で推しさんを観て今日来ました」
推し「ッフ……(笑う口元を塞ぐ)……ありがとうございます」
So cute...!!!(天を仰ぐ)
ちょっと意味わかんなかった(褒めてる)
この後は多分話とか演技とかの感想をどもりながら言ったと思う(記憶喪失)
初めて話した推しは、堅苦しくなく、物理的にはともかく精神的に程よい距離でいてフレンドリーでした。
よーし!手紙はちゃんと渡した。読んだら燃やしてくれ。
ワイ「また観に来ます。ありがとうございました」
推し「はい!ありがとうございます!!」
その後どうやって山手線に乗ったのか、割とガチで覚えてない。
気付いたら山手線に揺られていた。
ツイッターで「推し実在してた喋ったヤバイ」とかそんなことを言っていたような気はする。
しかし顔近かったな、と後日友人に漏らすと「久保田悠来も近いよ」と言われました。
顔面偏差値高い人が無防備に顔近くていいのか、と勝手に要らない心配をする私。
コンプリート強迫観念
推しは東京と大阪で活動していました。
どちらにせよ、愛知県在住の私は遠征を余儀なくされています。
残念ながら、体質的に鈍行列車や夜行バスがつらいので(何回か試したけどほんとキツいし、知らん男にカーテン開けて覗かれる事故発生)、移動のほとんどは新幹線です。
新幹線も往復で利用していれば出費が嵩みます。
舞台を観に行く以外の趣味にも出費はあります。
2014年、財政難到来。
ほぼ毎月のように新幹線に乗る、1本の舞台で3~5回見る、複数回観るために1泊2泊する、物販では大量の買い物。
さすがに財布が寂しいことになりました。
2013年はすべての出演を観に行っていたのに、とうとう諦めざるを得ない日が。
フラストレーションすごかったです
推しが!出演しているのに!観に行ってないだと!!!
その反動か、2015年は9割くらいと頑張って行きました。
2016年にはこれも落ち着いたんですが、2013~2015年はとにかく、推しが出ているものは全て見なければ、という謎の強迫観念がありました。
もちろん「見たい」という純粋な気持ちが一番で、その次にあったのが「好きなんだから見なければいけない」でした。
今思えばなんだそれ、って感じなんですけど。
1回も観に行けない期間は、
「不甲斐ない」
「ツイッター見ると悔しくなるから閉じとこ」
ともやもやしてました。
とにかく、「自分の目でその姿を見なければ」という考えに囚われていたのです。
何が不甲斐ないのか今の私にはわかりませんけど。
「推しが東京にいるなら今の仕事辞めて東京に引っ越して転職するか。オタクだから都会の方が楽しいのは間違いないし」
こう考えていたのもこの時でした。
お金よりも、すぐに行けない距離が憎たらしかったのかもしれません。
めちゃめちゃ真剣に考えました。
ちょうど仕事の方がKUSOな状況で嫌気がさしていたのも相俟って、スーモや転職サイトをぐるぐるしてました。
結局これもしばらくしたら冷静になって、今でも同じ職場に居ます。
東京に行ったところで転職失敗したら生きていけないし。
お金なかったらお芝居観に行けないし、物販でブロマイドも買えないし。
「好きなんだからコンプリートしなくてはいけない」
思い返せば恐ろしい考え方してたなと。
要は、録画された映像でもなく、観た人が文字に起こした感想ではなく、自分の目で見たい。その一心でした。
小劇場というのは、チケット販売開始当日ならほぼ確実に買えます。
人気公演の良席は取り合いですが、場所を選ばなければまず椅子には座れます。
「厳選なる抽選の結果、チケットをご用意することができませんでした」
そんな文面に遭遇することはまずありません。
金さえ出せば見られるはずの舞台なのです。
(商業舞台はチケット外れたら「競争率高いからな」で大抵諦められます。私は。)
でもお金は有限だし、所得を増やすために仕事をするにしても体だって限界がある。
楽しむものに対して義務感を持ってはいけない。
義務感を抱くと疲れる。
その瞬間に見たいものを見ろ
2017年になって、私はその謎の義務感と決別しました。
「推しが出演!行かなきゃ!」
ではなく
「面白そうだし、都合がつきそう!行こう!」
に切り替わりました。
どうやって決別するかは意識しておらず、ある日ふと、やめようって思っただけです。
2回3回4回5回と劇場に張り付いて尻が割れそうな時も多々ありましたが、それもやめました。
脚本が面白いと分かり切っている推し所属劇団の本公演は別として、客演の場合は冷静に財布と相談しています。
他にも予定が有るから、日帰りでマチネの1回だけにしておこう。
このパターンが増えています。
カメラが見るべき場所を示してくれる映像作品とは違い、舞台は1回観ただけでは幅広なステージ上の全てを目で追うことはできません。
主役を見ている間に脇役が何をしているか。Aが大きなリアクションをしている間にBがしている細やかな所作など、全部を把握するのは困難。
複数回見ている時は、あんな時の手の動き、こんな時の視線、あの時の表情など、生態観察でもしているのかと言わんばかりに推しを見てました。
しかし、回数を絞ることでそれをやめました。
お芝居の見方は二通りあると思われます。
①推し観察
②ストーリー・各人物の動向観察
①と②を同時にこなす器用さは私にはありません残念!
これまで推し出演の公演は、ほとんどの場合3回は見る人間で
1回目:ストーリー・登場人物の把握
2回目:推し観察
3回目:推し観察(好みの場所リプレイ)
こんな見方が多かったです。
1回しか観ないのであれば、私の場合①:②=2:8くらいの割合になります。
ぶきっちょですからね。できるものなら10:10とかで見たいよ。
あと、これは私の話なのですが。
「1回きりだから大事にしっかり見よう」
という気持ちが芽生えました。
今までしっかり見てなかったんかと、言われれば決してそうではありません。
私なりに楽しみながら見ていましたし、推し追っかけと言いましても、作品そのものがつまらなければ結局つまらないのです。
(1回だけ……ちょっと……つまr……というのがありまして、あれは推しが居ても……うん)
何と言いますか、改めて思ったんです。
素敵な役者を知った。
その役者を観ようと、劇場へ足を運ぶ。
観に行ったら、素敵な作品に出会えるかもしれない。
推しが良かった!だけではなく、ストーリーが良かった、他の役のここが良かった、演出が良かったなど、いろんな見どころに気付ける。
先述の通り、私は見方も不器用です。
なので、その瞬間に「見よう」と思った部分を素直に見ていよう、そう考え始めました。
自ずと無理をしなくなった現在
複数回観ていた頃より、ずっと肩の力を抜いている気はします。
加えて、推しの面会にそんなに緊張しなくなりました。
以前の私は「持ち時間1分か2分と見積もって、これとこれとこれを言うぞ!私の後ろに今二十人くらい並んでるから残りの時間を考えるとやはり挨拶しながら差し入れ渡して30秒で喋って30秒で写真を撮らせてもらわなければカメラ起動したよしよしオーケーシミュレーションばっちりイェェェイ!!!」という感じでした。
長くても2分で去ろうという考えは変わっていません。
自分以外にも、我らが推しに会いたい、感想を伝えたい、贈り物をしたい方はたくさんいます。
役者さん本人から「もう次の人に」なんて言うことは(殆ど)できません。
だから、自分が時間を気にするべきかなと考えています。
ガッチガチに緊張して何言ってんのかわからなくなって、写真撮るときにもたつくことが少なくなりました。
きっといい意味で緊張しなくなったんでしょう。
喋るのもスムーズになったかな。思ったことをスルッと言えるようになったし、「ああああああ帰りたくないィィィああああああああ」というのも軽減され「ソワレも頑張ってー!」という晴れやかな気持ちで去れるようになった。
推しを見る時間、回数は圧倒的に減った。
でもメンタル面で健康的になった。
たくさん観なきゃ、よく見なきゃ、と自分を追い詰めることもなくなった。
今の形で十分楽しいし、嬉しい。
二次元一筋で生きてきた私。嵐のメンバーを全員言えない私が、実在の人物に夢中になって追いかけるというのは、革命とも言うべき出来事でした。
枕詞の如く推しの名前を言いまくっていた私の話に付き合ってくれてありがとう、友人たち。
「いいから私の推しを見てくれ」と無理を言ったのに、東京や大阪の舞台にまで付き合ってくれてありがとう、地元の友人たち。
今では嵐のメンバーもちゃんと言えますし、芸人以外の芸能人の顔と名前を少しずつ覚えられるようになりました。我ながら成長を感じる。
小劇場のみならず大きな箱でも出演されているので、一人でも多くの方が推しの姿を見る機会があればと願っています。
推しのファンが増えるのは嬉しい。
会いに行くと相変わらず顔が近いですが、心なしかそれも平気になりました。
今でも格好良く、時には可愛く、稽古風景の写真で見せる姿や舞台上の役に入り込んだ姿は素敵です。
今でも私の最推しです。
これからもできる限り応援したいです。
来月も観に行くので楽しみにしています。
でも健康には気をつけてください。
肌に出てます。